Xmas Contest 2021 A 問題 展覧会のご案内

本日は Xmas Contest 2021 A 問題の展覧会へご来訪いただき、誠にありがとうございます。本展覧会では、共通のデザインを下地に数々の画伯が仕上げた Xmas Contest 2021 の看板を各々の作品解説とともにご覧いただけます。

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共通デザイン

解説

この問題は AC のための達成基準が緩めに設けられていることもあり、多様な方法で解くことができます。代表的な解法例と、いくつかのポイントを解説していきます。

ラソン

ざっくり言うと、「次にきつねたちを動かす点を適当な評価関数で評価し、よさげな点を選んであげる」方法です。

評価関数の例としては、「黒くするべき点を黒くしたら +1 点、白くするべき点を黒くしたら -2 点」というスコアを各きつねに対して計算し、きつね 0 と 1 のうちより悪い方をとる、などが挙げられます。

達成基準を満たすような評価関数の内容には大きな幅があると思いますが、白くするべき点を黒くするペナルティを大きめにする (黒く塗った画素を白に戻すことはできないため)、各きつねに対して計算したスコアのうち悪い方をとる (最悪ケースの損失を抑える) などが基準を満たすために有効です。

また、すべての点に対して評価関数を計算すると結構重くなってしまうので、ランダムに何点かとって評価するなどとして候補を減らすのも有効です。最大で 10,000 回まで線を引けますが、これはかなり余裕をもった回数になっているので、あえて線をもっと少ない回数しか引かないようにした上で評価関数を計算する点の候補数を増やして精度を上げてやるとより上手くいくこともあります。

非マラソン

線を引くべき箇所をあらかじめ何らかの方法で決めてしまい、そこに確実に線を引いていくといった方法です。

狙った場所に確実に線を引くには、きつねを 2 匹とも同じ画素に置く必要がありますが、これは同じ画素を平均 3 回程度連続して指示すればよく、だいたい 4 回の操作で狙った線分を一本引くことができます。やはり操作回数にはかなり余裕があるので、面倒なことを全く考えないようにするため、常に双方のきつねを同じ画素に置くようにするということも可能です。

線を引く箇所を決める方法としては、手作業でデザインをうまく覆うような長方形をいくつか配置する、横方向に連結な黒い画素に分割するなど、こちらも色々と実現方法があります。

展覧会

本展覧会における展示作品はコンテスト時間中に AC 判定を得た解であり、展示順は AC 時刻の昇順となっています。また、画像は実際の採点時に用いられるものと同じジャッジを用いて生成されました。解法そのものに計算時間や乱数への依存が含まれるなど、同一の画像が再現可能ではない場合があります。

コンテスト終了後に作り上げられた作品については (キリがなくなってしまうので) ここでは取り上げませんが、ぜひ Twitter などで画像やアイデアをシェアしてみてください!

nahco314 画伯

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  • 黒: 73948 / 86927 (85.07%)
  • 白: 114404 / 163073 (70.16%)
  • コンテスト開始から一時間で提出された FA 解。解法としては、各文字ごとに黒い画素の連結成分内からランダムな点を選び続ける、というとてもシンプルな手法。このため文字や数字の内部がほぼ全て塗られた状態となっているが、結果として白の精度が 70.16% と基準スレスレを達成しており、ミニマルな美しさがある。
  • 「達成基準は自分が適当に書いたマラソン解の精度をだいぶ緩めて適当に設定しただけで、この方法がここまで綺麗に精度 85%, 70% になるとは驚き」とは問題作者の言。

bowwowforeach 画伯

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  • 黒: 81577 / 86927 (93.85%)
  • 白: 129953 / 163073 (79.69%)
  • 横方向に連結な黒画素を確実に塗っていくことでカラフルな仕上がりを実現した作品。横に連結な成分ごとに分解する手法は他の画伯も用いているが、その上でもどの順で線を引いていくかで全く異なった味わいが出るのが面白い。bowwowforeach 画伯の場合、ある線を引いたあと、そのまますぐ右へ行くか行かないかが場所によって分かれているのが特徴的。0 と 2 の繋がり方などを見るに、同じ y 座標ですぐ右の線分がある一定の距離より近いかどうかを基準としているのだろうか。文字同士の繋がり方はどこも面白いが、中でも N と T の間は繋がっていたり離れていたりを繰り返しており、閾値の妙が感じられる。

toku4388 画伯

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  • 黒: 78787 / 86927 (90.64%)
  • 白: 120114 / 163073 (73.66%)
  • 達成基準の緩さを最大限活用し、大胆にも 2021 の 21 をすべて無視することで、あたかも去年の看板 (あるいは開催 20 回目の看板) であるかのように作られている。まず目を引くのはその点だが、文字から刺々しく飛び出た線によるマラソン解の味も忘れてはいけない。ここでは飛び出た線がいずれも短く収まっている点に特に注目したい。おそらく次の候補点をきつねの現在地から近い点に絞ることで精度を高めているのだろう。これによって文字からたくさんの線が飛び出ていながらも、文字ごとのまとまりがきちんと保たれた作品となっている。

sbite 画伯

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  • 黒: 78281 / 86927 (90.05%)
  • 白: 151527 / 163073 (92.92%)
  • 2 匹のきつねに完全に同じ動きをさせている。いくつか見るべき点はあるが、なんといっても特筆すべきはブラシで描き殴ったような力強さを感じさせる上部と、デザインを輪郭を綺麗になぞった下部の対比。元のデザインにおいて上部にかかっていたエフェクトの特徴はどうしても失われがちな傾向があるこの問題で、はっきりとエフェクト有りの上部と無しの下部でタッチが分かれているのは見事。それぞれをもう少し詳しく見ると、上部は X の線が N へ繋がっていたり、A と S の間に何本か線が見えたり、実際は細い線分をたくさん引いているだけにも関わらず太い筆の筆致が見えるような気がする。そう思うと TEST の下が欠けているのも味に見えてくる。下部は全体的な丁寧さの中でも特に、マラソン解などでは潰れがちなうさぎの目が綺麗に見て取れる点は評価が高い。白黒どちらの精度も 90% 超えという高水準でありつつ独自の芸術性も併せ持った作品といえる。

sh_mug 画伯

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  • 黒: 74700 / 86927 (85.93%)
  • 白: 142115 / 163073 (87.15%)
  • 長方形でデザインを近似して塗るタイプの解。このタイプの画像では何よりもまず、長方形による領域のカバーの仕方による個性が出る。sh_mug 画伯の場合、非連結ながらも必要十分な働きをしているように見える X や、大胆に斜めの部分をカットした 2 にまず目が行く。それだけでも素晴らしい作品だが、ここではあえて TEST 部分にもさらに注目したい。T, E の上部や E, S の中央・下部など、ひとつの長方形で 2 文字にわたる領域をカバーしていることがわかるだろう。また、長方形の配置だけでなく塗り方についても見ると、基本的には 2 匹のきつねどちらでも塗っているが、一部の線は片方のきつねしか引いていない。これによって画像全体の情報量がただ増えるだけでなく、それぞれの長方形が縦向きか横向きかといった点も表されることになり、結果として画像の深みが増している。

googol_S0 画伯

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  • 黒: 73950 / 86927 (85.07%)
  • 白: 114295 / 163073 (70.09%)
  • ひと目見ただけでその異質さが分かる作品。よく見てみると、鉛直か水平な線分だけを用いており、斜めへの移動を全く行っていないだろうことが分かる。長方形でカバーしたり、横に連結な成分に分けたりする方法のメリットとして「ブレゼンハムのアルゴリズムのようなことを考えなくても塗るべき画素が簡単に分かる」という点があるが、この作品はその斜め移動をしないことによるシンプルさというメリットを享受しつつも、先に挙げた方法のような前もっての領域設定を行っていないというのがその異質さの源であろう。きつねは 2 匹とも同じように動かすことを前提として、縦移動と横移動のみを使うとすれば、次の操作の候補数はかなり絞られてくる。そうして最も良い縦横移動を繰り返すとこの画像ができるというのは非常に面白い。

yuusanlondon 画伯

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  • 黒: 79326 / 86927 (91.26%)
  • 白: 120644 / 163073 (73.98%)
  • ぱっと見たときの派手さに何よりも目を引かれる作品。マラソン解らしい、非常に長い線分がキャンバス上を乱舞している様が活力を感じさせる。yuusanlondon 画伯は、先に挙げた toku4388 画伯とは逆に、次の候補点を近くに絞ることなく広い範囲から探索したと思われる。それにより、一見乱雑に引かれただけに見える長い線分たちの中からデザインが浮かび上がってくるような、マラソン解の妙とも言える印象を作り上げている。いくつか散見される長い線分のまとまりは、「白い部分もよく通るが黒い部分もとてもよく通る」ので採用されたような線であろう。その中でも、CONTEST の左下から右上に抜ける線分はなかなか人間の目では発見が難しいのではないかと思われる。そうした線を見ることができるのもコンピュータの力を余すところなく活用したマラソン解の楽しみと言える。

komori3 画伯

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  • 黒: 78339 / 86927 (90.12%)
  • 白: 130926 / 163073 (80.29%)
  • 一見すると、きつねを同時に動かしつつ大域的なマラソンをやったように見える。だが、komori3 画伯の作品を他のマラソン解、たとえば先の yuusanlondon 画伯の作品と比較してみると、長い線分のまとまりが散見されることは共通しているが、komori3 画伯の方にはそれ以外に文字をはみ出ている箇所がほとんど見られないことに気づく。これは greedy に次の操作点を決めていくような手法とは異なり、きつねの移動経路全体を徐々に最適化していくような手法が用いられた結果と思われる。これにより、greedy なマラソン解のような大胆な線を残しつつも、その他のはみ出しを極力省いて綺麗な作品へと至ることができる。結果として、sbite 画伯の作品に見られた力強い筆のような筆致と、yuusanlondon 画伯の作品に見られた非常に長い線分による活力を高度に同居させた唯一無二の作品へと仕上がっている。

KawattaTaido 画伯

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  • 黒: 75628 / 86927 (87.00%)
  • 白: 155128 / 163073 (95.13%)
  • 95% という圧倒的な白の精度と、画像を見ても分かる通り、とても綺麗にデザインがなぞられている。基本的には toku4388 画伯と同じように、いまきつねのいる画素から近い画素だけを次の操作の候補点とするようなマラソン解であろう。toku4388 画伯の作品と同じく 21 が無視されているのは面白い。これはおそらく変形によって 0 と 2 の間が他の文字と比べて広く空いてしまい、短距離の操作のみでは 21 へと遷移することができないためと思われる。さて、大まかな方針は toku4388 画伯と似ているとはいえ、似ているからこそ評価関数や選択基準の違いが画像にはとても分かりやすく現れる。どの文字もほとんどはみ出ることなくきっちりと塗られているため、画像としての印象は toku4388 画伯のものとは大きく異なる。ぴったりとデザインに沿った綺麗さを備えつつも、内部の塗りにマラソンらしい荒々しさが感じられるこの対比が何よりの見所と言えるだろう。

Shun_PI 画伯

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  • 黒: 79565 / 86927 (91.53%)
  • 白: 127072 / 163073 (77.92%)
  • ラソン解らしい長い線分がまず目に入るが、これまでのようにまとまった線分がいくつかあるという形ではないところに注目したい。きつねたちがキャンバス上を縦横無尽に動き回って描いたのだろうと想像できる活き活きした線たちが見た目にも楽しい作品である。また、マラソン解と思われる一方で、長すぎる線を引いて線が文字からはみ出るといったことがほとんど起きていない点は驚きに値する。たとえばうさぎの輪郭がとても綺麗にとられていることからも、文字間を渡り歩く線は大胆に引きつつも、無駄な長さは許さないという様子が見て取れる。候補点の選び方や試すパターン数などの設定によって生み出された特徴である。

sugim48 画伯

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  • 黒: 76270 / 86927 (87.74%)
  • 白: 114571 / 163073 (70.26%)
  • 横方向ではなく縦方向に連結な黒い成分で分けて描いたと思われる作品。分けたあとの縦線をまとめて引いてしまうのではなく、ある一定の高さごとに分けて細かく描き分けていることが見て取れる。また、文字間を何度も移動しているのか、横に長い線分が背景のように引かれている。これらの要素が複合することで、まるでデザインの文字たちが浮き上がってきたような、他の作品にはない独特の立体感を生み出している。この問題でここまではっきりと立体感を感じさせる画像を作ることができるとは驚きである。

startcpp 画伯

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  • 黒: 73888 / 86927 (85.00%)
  • 白: 115760 / 163073 (70.99%)
  • ラソン解らしい荒々しい線たちが目に飛び込んでくるが、その荒々しさをさらに増しているのが 85.00% というギリギリの黒の精度であろう。黒の精度が 85% に達した時点で操作を終了したと思われ、それにより必要最小限の描画となっている。結果として他の画像よりも線と線の隙間の空白がより目立つ形になり、それが線分が飛び交う荒々しさをより際立てて見せている。また、線の密度が低いことにより色使いにも違いが生まれてくることにも注目したい。特に線分の届きづらいキャンバス端 (C や 右上の S や 1 など) では、両方のきつねが訪れたピンクが少なく、青やオレンジのほうが目立つようになっており、遠くから見た際にマーブル模様のように見える。

kemuniku 画伯

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  • 黒: 74088 / 86927 (85.23%)
  • 白: 133559 / 163073 (81.90%)
  • 長方形による領域のカバーに見えるが、なんと軸平行な長方形だけではなく平行四辺形や三角形に近い形もあるのは目新しい。これにより特に一段目の XMAS は斜めの線や曲線が多いため、とても綺麗に描き出されていることが分かる。図形の種類が増えて自由度が増えたので文字の形をとりやすくなっているはずだが、一方でうさぎの右耳は綺麗にとっているのに顔がほとんど正方形で塗りつぶされていたりするところに愛嬌を感じる。図形が長方形に限らないためか、内部の塗りつぶし方も確実に塗っていくというよりは、ランダムに近い線の引き方を繰り返していると見えて塗りにも味がある。この塗り方のために図形の端に近い部分はあまり線が引かれていない状態になっており、うさぎの顔や 2 の底辺など、少し真ん中が凹んだような形に見えるのも特徴と言えるだろう。

hari64 画伯

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  • 黒: 75350 / 86927 (86.68%)
  • 白: 160547 / 163073 (98.45%)
  • XMAS CONTEST の文字を一見すれば分かるように、細い線で丁寧になぞるように描かれている。この結果、白の精度が 98.45% という驚異の値となっている。きつねの動きを同期させていない状態でこの白精度はまさに圧巻と言えるだろう。文字のエフェクトをほとんど無視して骨組みを綺麗になぞっている点に目が行くが、他にもうさぎの目が非常に綺麗に現れているところに注目したい。全体を通して慎重な線運びを見て取ることができるが、文字間の移動にもそうした特徴が現れているのは面白い。中でも C からうさぎへの移動に明確に出ているが、一本の線で C からうさぎへ移行するのではなく、折れ線を描きながら移行しているのが分かる。この点からも、できるだけ大きな移動を控えて正確に線を引いていこうとする姿勢が感じられる。

sotanishy 画伯

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  • 黒: 74088 / 86927 (85.23%)
  • 白: 128218 / 163073 (78.63%)
  • 平行四辺形によるカバーが目を引く一作。平行な 2 つの線分をなぞるように両端点を動かしていきながら内部を塗っていると思われる。その際、端点を動かす速さによる塗りの密度と線の本数のバランスをとった結果だろうか、内部が完全に塗られているのではなく縞模様が出ているのが特徴的である。この塗りが完璧ではないという点がまた別の面白い特徴を生んでいるというところにも注目したい。塗りが完璧ではないということはデザインをはみ出た平行四辺形に対してのペナルティが少なくなるということなので、平行四辺形をデザインに対して大きめにとることができる。同様に軸平行な長方形以外を使っていた kemuniku 画伯と比べるとわかりやすいが、全体的に文字が太めに描かれている。そうした力強い太い線でありながら、塗りが縞模様のようになっていることで圧迫感を薄めており、デザイン性の強い仕上がりとなっている。

Medakaa 画伯

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  • 黒: 81622 / 86927 (93.90%)
  • 白: 140423 / 163073 (86.11%)
  • 縦方向の連結成分に分けて塗っている。縦方向への分割は sugim48 画伯に続いての作品になるが、同様の塗り方でありながら見た目は大きく異なっているところが面白い。sugim48 画伯が線分の上下端をブロック的に定めることで立体感を出しているのに対し、Medakaa 画伯は上下端をデザインに忠実にとることで、平面的なマーブル模様といった趣きになっている。特に XMAS CONTEST の部分で文字にかけられたエフェクトを塗りつぶすようにしているが、それでも上下の端は元のデザインに忠実な場所をとっていることから、アウトラインが独特の雰囲気を帯びている。このデコボコとしたアウトラインがマーブル模様的な塗りとマッチしており、他の作品にはないグラフィティ感を演出している。

riantkb 画伯

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  • 黒: 77735 / 86927 (89.43%)
  • 白: 141765 / 163073 (86.93%)
  • 塗り方としては横方向への分割だが、分割前になんらかのフィルタの畳込みによる平滑化を行ったように見えるモコモコとしたアウトラインが特徴的。XMAS CONTEST 部分のエフェクトへの対処としてこうした画像処理的なアプローチをとっているのは珍しく、それがこの作品の味にもなっている。先ほど挙げた Medakaa 画伯のものと塗りの方向とエフェクト部分の均し方が異なるが、それによってここまで印象が変わってくるのは面白い。riantkb 画伯の場合はこの滑らかな形と色とりどりの横線が全体的にポップな雰囲気を与えており、かわいらしい出来になっている。またポップさという観点で言えば、本来の平滑化の目的とは外れた 2021 の部分でもフォントの角などが丸められることで全体として統一感が保たれているのは素晴らしい。

abb 画伯

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  • 黒: 79599 / 86927 (91.57%)
  • 白: 135131 / 163073 (82.87%)
  • 平行四辺形によるカバーを同期したきつねたちで塗った作品。まず注目したいのは、並べられた図形の外へはみ出た部分がほとんどなく、全体として非常にすっきりと塗られている点。このすっきりした塗られ方に平行四辺形たちの幾何学的な印象が良い具合に組み合わさっている。しかし機械的すぎるといったことはなく、むしろ絶妙に傾いて配置された四角形たちが温かみを感じさせるような出来になっている。この作品の特徴のもう一つが、一部の塗りが不完全で縞模様のようになっている点である。sotanishy 画伯の作品でも似たようなことが起こっていたが、こちらでは縞模様の方向が異なっていることでまた別の効果をもたらしている。sotanishy 画伯の場合は長辺に沿った縞がブラシのような質感を表現していたが、abb 画伯の場合は短辺に沿っていることや端に近い部分で縞模様が現れていることがクールなエフェクト感を醸し出している。

hasi 画伯

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  • 黒: 77321 / 86927 (88.95%)
  • 白: 154461 / 163073 (94.72%)
  • 同期したきつねたちによってマラソン的に塗った作品。全体的な印象としては sbite 画伯の作品に近いものを感じるが、比べてみると hasi 画伯の作品はデザインの外にはみ出た長い線分の数が非常に少ないことがわかる。実際、白の精度を高く保つことが比較的難しいはずのマラソン解で hasi 画伯の作品は白精度 94.72% というとても高い水準を達成している。この全体的なはみ出しの少なさが、それぞれの文字から受ける印象にも変化をもたらしている。刺々しいという手触りこそ変わらないものの、こちらは実際の棘というよりはなにか電撃のようなエフェクトを纏っているような雰囲気になっている。「飛び出している」よりかは「纏っている」と感じられるのはひとえに丁寧な塗り方によりはみ出しが極力抑えられているためであろう。

tute7627 画伯

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  • 黒: 79532 / 86927 (91.49%)
  • 白: 135882 / 163073 (83.33%)
  • 縦方向の連結成分への分割だが、ひと目見て分かるようにかなり分割が大胆になっている。ある程度短い白成分は無視して上下の黒成分をつなげた結果であろう、O の内部やうさぎの目がまるごと塗り潰されているところに勢いを感じる。これにより長い縦線の本数が多くなるので、全体として縦向きの流れが強調されており、降りしきる雨のような質感が全体に与えられている。このように雨や水の質感を見て取ると、これまた大胆に一部無視されている 2 や 0 の一部などもまるで雨や水を弾く傘のようなものが見える気がして面白い。

eivour 画伯

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  • 黒: 73891 / 86927 (85.00%)
  • 白: 130461 / 163073 (80.00%)
  • 黒の精度が 85% ぴったりであることからも分かるように、必要最小限の線だけで仕上げたことが分かる作品。同様の手法を採ったであろう作品として startcpp 画伯のものがあるが、それと比べると eivour 画伯の作品では線分の長さがどれも短いことが分かる。このため eivour 画伯の作品では全体として線の引かれた画素数が少なくなっており、結果として全体の密度がとても低く抑えられている。この密度の低さにより、うさぎや文字の内部に青・オレンジ・ピンク以外に白という色も使われているように見えて賑やかさがより増している。全体として非常に線が少ないながらも短い線分でまとめたことで文字ごとのまとまりはしっかりと描かれており、はみ出し部分と元のデザイン部分の境界線が曖昧になっているのが印象的な作品である。

ksun48 画伯

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  • 黒: 77102 / 86927 (88.70%)
  • 白: 138128 / 163073 (84.70%)
  • 縦方向の連結成分への分割をもとに塗った作品。それぞれの縦成分の長さをある一定に抑えてはみ出しを減らし、丁寧に塗っていることが見て取れる。この作品に見られる特徴として、きつねたちが左端の画素を通って降りながら、それぞれの「層」ごとに塗っていったような線が残っている点が挙げられる。この左端の線と、そこから文字へ出ている長い線がとても綺麗に出ているのがポイントで、これによって「層」の存在がよりくっきりと可視化されている。また全体としても左の方から生成されたということが見て分かるようになっており、層の存在とあわせて構造を感じさせる作品となっている。

amitani 画伯

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  • 黒: 75234 / 86927 (86.55%)
  • 白: 118485 / 163073 (72.66%)
  • 横方向への分割と塗りだが、とても大胆に長い成分に分割していることが目を引く。N, T, E, S などはほとんど全部ひとつの長方形のように塗り潰されており、白の許容精度 30% ぶんをフルに活用した作品と言える。また、うさぎの顔の輪郭などを見ると分かりやすいが、黒い部分をあらかじめ少し収縮させたような状態から分割を行っていることが見て取れる。これはおそらく XMAS CONTEST 文字部分のエフェクトへの対策であろう。この収縮が画像の左右両端にまた面白い効果をもたらしており、特に C の左や 1 の右が大胆に削られているのは特徴的。また、横方向への分割であるにも関わらず、MA から T、S から T、CO からうさぎなど、縦方向に大きく成分をくっつけているような部分があるのは他の作品にはあまり見られない点である。

KoD 画伯

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  • 黒: 77015 / 86927 (88.60%)
  • 白: 115518 / 163073 (70.84%)
  • 縦方向への分割だが、この作品の特徴はむしろデザイン外の部分であろう。少しだけ右に傾きながら上下へ長い線分が次々と引かれており、まるで全体が織物であるかのような質感を与えている。色についても特筆すべき点があり、青とオレンジの線が完全には重ならずギリギリで隣り合っている部分が少し緑っぽく見えることで、普通ではありえない色を描き出すことに成功している。少ない色を交互に点滅させることで実質の色数を増やしていたスーパードンキーコングシリーズを彷彿とさせる工夫で、この問題でもそのようにして描き出されたピンクと緑の織物を見られることには驚嘆せざるを得ない。

semiexp 画伯

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  • 黒: 86927 / 86927 (100.00%)
  • 白: 119195 / 163073 (73.09%)
  • 横方向へ分割した上できつねたちを同期させて塗っている作品。その塗りはあまりにも丁寧という他ない。ある程度より短い白い部分を潰しているので、全体としてはデザインをはみ出して塗っている部分こそ多いものの、この塗りの真骨頂は黒精度 100% を達成している点にある。白い部分を 30% だけ塗ってしまっても許されることを活用し、文字へのエフェクト部分まで細大漏らさず拾い上げて塗っていることが見て取れる。はみ出し部分についても、おそらく左から右へ向けて成分を繋げていったことによるものであろう、キャンバスの右端へ向けても黒い成分を伸ばしている点には注目したい。これにより、全体的に左から右への流れが表現されており、特に S, T に見られるような一部だけ右に伸びた箇所が流れに沿った疾走感を演出している。

cubinglover 画伯

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  • 黒: 82433 / 86927 (94.83%)
  • 白: 116057 / 163073 (71.17%)
  • 横方向への分割による塗りで、上部と下部で大きく趣きが異なるのが印象的。下部はとても綺麗に塗られており、デザイン間を移動する長い線もそこまで多くない。一方、上部はおそらくエフェクトによる小さい連結成分を丁寧に塗っていったためであろう、デザイン間を移動する線分がとても多くエネルギッシュな仕上がりになっている。その結果、操作回数の都合だろうか、S や ST など、塗り残された部分があるのも特徴的である。特定の文字や場所に塗り残しが出やすいのは一般的にはマラソン解であるが、cubinglover 画伯の作品は横方向への分割ベースでありながら一部の文字にマラソン解に見られるような味が残されているという点が非常に面白い仕上がりとなっている。