Xmas Contest 2020 A 問題の驚くべき結果について

Xmas Contest 2020A 問題をご存知でしょうか。さまざまな色のスタンプを押したり引いたりすることで領域の塗り分けを行うという、いかにも派手な見た目の問題です。

さて、今ここに、この Xmas Contest 2020 A 問題の writer を名乗る人物から送られてきた、一通の書簡があります。この書簡には問題の解説のみならず、コンテスト中に提出された数々の画像についての品評が記述されており、たいへん見応えのある書となっています。

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コンテストの運営と参加者が共同で創り上げた、この美術展覧会めいた書をいかにすべきか。判断の難しいところではありましたが、今日は節分なので公開することにしました。

解説

この問題の解き方は「手作業」「非マラソン「マラソン」の三通りに分類されます。

手作業

強く生きてください。

非マラソン

背景が綺麗な長方形をしているので、前景の文字やうさぎを無視すれば正確に塗ることができます。特に、スタンプの一部が画像の範囲外になっていても構わないことを使うと楽だと思います。

背景を塗り終えたら、前景に当たる部分からひたすらスタンプを引いていって黒で塗るのが簡単です。引く基準をどう判断するかはいくらかやり方があると思いますが、場合によっては最後に手作業を併用して調整するなど、案外なんとかなります。

この方法が総合的には最も楽そうで、実際このやり方と思しき提出が多かった気がします。

ラソン

たとえば、「領域ごとに目標の平均色を決め打って、その平均色に近づいたり分散が減ったりするようなスタンプを適当に押していく (スタンプの種類や押す場所はランダムに適当な回数試す)」とかで十分です。

単純ですがわりと実装量は多いことと、やってみるまで AC 基準に到達できるか分からないことで、実際にこういうやり方をした人はほとんどいなかったと思います。

品評会

AC 時刻順です。

takumi152 画伯 (01:41:32)

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  • 🏆First AC 賞
  • スタンプ数: 10704
  • お手本のような非マラソン解。背景色は暗くしたほうが前景を引くときにスタンプ数が削減できるが、あえて最もビビッドな赤と緑にしている点は目を引く。多様な取り組み方が考えられ、また作業量も多くなってしまうこの問題で、素晴らしい早さでの提出。

NASU41 画伯 (01:43:45)

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  • 🏆ミニマリスト
  • スタンプ数: 1646
  • 背景を塗ったあと、前景の引きは手作業だろうか?スタンプ数が非常に少なく、前景の独特のピクセル感がいい味を出している。背景の色分けで > の字形に同じ色を配しているのも特徴的。さらにうさぎの目は後から足されており、結果的にここだけ他にない色となっているなど、見どころが多い。

abb 画伯 (01:59:31)

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  • 🏆ピクセルパーフェクト賞
  • スタンプ数: 17943
  • おそらく最も驚くべき提出。すべての領域のすべての色成分の分散が 0 となる、完全な塗り分けが行われている。17943 回という多量のスタンプによって実現された完璧な画像は圧巻の一言。

pelno 画伯 (02:17:45)

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  • スタンプ数: 13449
  • 綺麗な非マラソン解だが、うさぎの頭の上の領域や、0 の内側が緑になっている。背景を赤と青基調にし、RGB の中で人間の目に最も明るく映る緑を小さい領域に持ってきたことで、目が痛くなりすぎず、しかしアクセントカラーはしっかりと主張する色使いはお見事。

gojira_ku 画伯 (02:26:11)

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  • スタンプ数: 6083
  • なんといっても特徴的なのは色。背景を塗るときは最もサイズの大きいスタンプを使うのが楽で、そのサイズのスタンプは R, G, B のうち一成分しか含んでいない。そのため背景はシンプルな赤や緑になりがちなところを、この絶妙に何色とも言い難い色で攻めている。時折混ざる紫系も良く、オッドアイうさぎもかわいらしい。

mtsd 画伯 (02:27:36)

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  • スタンプ数: 2273
  • 非マラソン解だが、これまでと異なる前景の引き方が伺える。正方形スタンプという制約から、必然的にピクセル感・ドット感が出がちなところ、この画像ではじんわりとぼやけた前景が目新しい。S の上部や 0 などに見られるように、文字の境界だけでなく内部にも「かすれ」のような味が出ている点にも注目したい。

Medakaa 画伯 (02:49:32)

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  • スタンプ数: 3469
  • 分散が 700 まで許されることを分かりやすく生かした、背景の縞模様が特徴的。この縞模様は画像の領域外へのスタンプを使わず、かつ最低限のスタンプ数で背景を塗ろうとした結果生まれたと考えられる。M が途中で途切れているように見えたり、2 や 0 の上部が背景の境界で切り取られていたりするなど、背景以外にも「これぐらいなら大丈夫」の結果として生まれた特徴が散見され、他にない独特な画像となっている。

mugen1337 画伯 (03:03:20)

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  • 🏆ネオサイバー賞
  • スタンプ数: 3853
  • 背景の塗りを見るに、おそらくすべて手作業だろうか?随所に条件を満たすための努力スタンプの痕が見られ、細かい所まで見て楽しめる。正方形を基調としたパターンながらいわゆるピクセル感ではなく、手作業のブレが生み出す独自の感触。特にうさぎに見られるような、折り重なった正方形によるサイバー感が素晴らしい。また、全体的に明るい色を使っていないにもかかわらず、まるで夜に輝くネオンサインを思わせる刺激的な色に感じられる点も特徴的。とにかく見飽きることがない、非常に芸術性の高い画像といえる。

scol 画伯 (03:18:15)

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  • スタンプ数: 8996
  • これもお手本のような非マラソン解。背景は赤と緑の 3 回押し (成分にして 120) で、無駄のない配色。前景の引き方もとても綺麗で、輪郭が非常にはっきりとしているのが印象的。その輪郭の鋭さも相まって、A や 2 やうさぎなどに見られる、ごく僅かな引き残しがより際立っており、ただのお手本にとどまらないグラフィティ感をささやかに演出している。

Gajumaru 画伯 (03:33:48)

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  • スタンプ数: 17635
  • またも特徴的な色使い。他ではあまり見ない色もさることながら、主に背景のあたりに手作業での調整に苦心したと思しき様子が見て取れるのも面白い。また、うさぎの目が正方形に近いところが、暗闇で目だけが光っているような表現を思わせて印象的。細かい手作業が多そうなので見るべき点も多く、たとえば A の小さな内部領域には非常に細かな調整の跡が見受けられ、じっくり見つめると吸い込まれそうな気持ちになる。

kiwamo 画伯 (03:42:00)

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  • 🏆グリッチモンスター賞
  • スタンプ数: 4992
  • かなり少ないスタンプ数で独自性の高い画像を仕上げてきている。白黒背景はこれまでになく、また前景の色も「この領域の色、なんだ?」と思わずじっくり見てしまう引力がある。前景はどれも同じように構成されているように見えて、A だけ異様に細かい文様が透けているところにアクセントが効いている。うさぎの目は正方形の瞳に四白眼のようになっていて、なんだかロボットのキャラクターのよう。全体の印象としては、白黒基調の中に、スタンプのズレによって生み出された赤や青や紫の細いラインが効いていて、グリッチ感がかっこいい。

emthrm 画伯 (03:47:35)

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  • スタンプ数: 16865
  • きっちりと塗り分けられた独特な色の背景と、ピクセル感の中にも境界付近に調整の跡が滲む前景の対照が印象的。前景の輪郭に見られる調整によって、あたかも文字の輪郭の一部が光っているかのように見えて素晴らしい味がある。背景にも境界に黒い線が残っていることから、全体的にくっきりとした印象で統一されている。調整の妙が生み出す味が特徴的な画像でありながら、機械的な印象の方が勝っているという珍しいケース。

tozangezan 画伯 (03:47:36)

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  • スタンプ数: 8186
  • 赤と緑の縦縞を作ったあとに、真ん中だけが光で照らされたような背景の配色が目を引く。M の右下あたりに背景と同じラインで明るい部分が残っている点が、より「縦縞+光」という印象を強めるのに役立っている。スタンプ数は 1 万に満たないながらも、前景の輪郭はかなり綺麗にとられており、また境界のにじみ具合から職人の業といった趣が感じ取れる。

hiikunZ 画伯 (03:49:34)

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  • スタンプ数: 13894
  • 赤と青に差し色の緑という pelno 画伯と同様の色使いだが、緑がうさぎの目にあてられた分かりやすい配色。必然的に構図全体の中でうさぎが目立つ形となっている。背景と前景の塗り引きに目を向けると、ぱっと見たところでは原色の対比ではっきりとした塗り分けに見えて、じっくり見ると塗り残しやにじみ、境界調整のためのスタンプと思しき跡が見えてきて味わい深い。